地域の医療を知る入口は、病院の中だけにあるわけではありません。学校や学びの場を訪ね、そこで暮らす人の話を聞くことからも、その土地の医療を支える姿が見えてきます。

「2026年度慶應義塾大学学部合同特別実習 稚内市地域診断」に参加した、医学部1年のG.N.さん。観光・教育を担当するチームの一員として現地を訪れ、最も強く感じたのは、稚内で暮らす人々の「つながり」でした。

この記事の目次

観光と教育から、地域の暮らしを知る

今回の実習では、「観光・教育」「医療」「インフラ」の三つのテーマに分かれて地域を調べました。G.N.さんが所属したのは、観光・教育を担当するチームです。

廃校を活用したプロジェクトに取り組む現場、教育委員会、生涯学習センターなどを訪問。さらに、市立稚内病院や現地の医療応援団にも足を運び、活動に携わる人々にインタビューを行いました。

最後には、訪問先で聞いた話をまとめ、地域の皆さんの前で発表しました。地域に赴き、声を聞き、自分たちなりに整理して伝える。観光や教育を入口に、その土地で人が暮らすことを考える実習となりました。

市立稚内病院で聞いた、学びの機会と医療の課題

市立稚内病院では、研修医の先生2人と院長先生にインタビューをしました。

G.N.さんによると、研修医の先生が稚内を選んだ理由として挙げたのは、早い段階から、都市部の病院では経験しにくいことに関われるという点でした。研修先を考えるうえで、どこで働くかだけでなく、そこでどのような経験を積めるかという視点に触れる機会になりました。

一方、院長先生への聞き取りでは、地域の医療を維持する難しさも話題に上りました。宗谷地域には三次救急を担う病院がなく、地域内で対応が難しい救急患者を旭川まで搬送する必要があること。稚内市全体で、医療従事者が不足していること。こうした課題が挙げられたといいます。

若い医師が経験を積める機会と、限られた人員で広い地域を支える責任。病院で聞いた話には、地域医療の両面が表れていました。

医療を「受ける」だけでなく、「応援する」市民たち

もう一つの訪問先が、現地の医療応援団です。今回の実習でも、学生たちの活動を支えてくれました。

G.N.さんが現地で聞いた説明によると、その発足の背景には、市民の医療に対する不信感や、医療従事者との間に生じていたすれ違いを解消したいという思いがあったそうです。

活動の一つが、市民から医療従事者へ、感謝のメッセージを届けること。地域の医療を支える人たちに、「ありがとう」を伝える取り組みです。

また、将来、稚内出身の医療従事者が増えることを目指し、小中学校で医療について学ぶ機会もつくっています。医療を応援することと、次の世代を育てること。その二つが、地域の中で結びついていました。

医療の課題に向き合うのは、医師や病院だけではありません。市民もまた、医療を支える側に立つことができる。医療応援団の活動は、そんな地域との関わり方を伝えてくれます。

「いい意味での田舎臭さ」に感じた、温かさ

さまざまな場所を訪れたG.N.さんが、稚内の魅力として挙げたのは、市民同士のつながりの強さでした。

「普段都市部に暮らしている私たちがなかなか触れることのできない、地域に生きる人々の温かい交流が、稚内の最大の魅力だと思います。」

G.N.さんのコメントより

G.N.さんは、このつながりを「いい意味での田舎臭さ」とも表現しています。そこで語られているのは、地域に生きる人々の温かい交流です。

観光や教育の現場で交わした会話も、病院で聞いた話も、学生を支えてくれた人たちの存在も。G.N.さんの言葉からは、施設や制度を調べるだけでは捉えきれない、地域の人々との出会いが伝わってきます。

地域を知ることは、そこで生きる人を知ること

G.N.さんが参加したのは、観光・教育を中心に地域を見つめるチームでした。それでも、その経験は医療と切り離されたものではありませんでした。子どもたちの学び、市民の活動、病院の取り組み。それぞれの場所に、地域を支える人がいます。

医療従事者の不足や救急搬送の課題を知ると同時に、地域の中にある温かさにも触れた今回の実習。G.N.さんは最後に、機会をつくってくれた人々への感謝を寄せています。

「このような貴重な機会をくださった春田先生はじめ関係者の方々に感謝しています。ありがとうございました。」

G.N.さんのコメントより

稚内で出会ったのは、地域医療の課題だけではなく、それを支えようとする人々でした。医学部1年生のまなざしが捉えた「つながり」は、これから医療を学んでいく人にとっても、大切な視点を届けてくれます。

記事について

この記事は、G.N.さんから寄せられたコメントをもとに構成しています。訪問先での発言や医療の課題は、実習時の聞き取り内容として紹介しています。「医療応援団」は提供コメントでの呼称です。写真の撮影・提供はG.N.さん。

2026年9月9日公開。

FIN.

読んだあとに、
少し違う景色が見えたなら。

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